海は荒れに荒れている
僕はしょっちゅう舵取りをしくじる
バランスがあさっての方向に
それでほかのことが手につかなくなることも
みっともないほどにしょっちゅう
みずからの足でよろめかなければならない
みずからの身体があることを知らなければならない
言葉の海は荒れに荒れ
四方八方がチクチクしている
黒い波が堤防にぶっつかる
僕は自分から濡れに行き
泣いているのかわからなくなることもしょっちゅう
みずからの言葉で漕ぎ出さなければならない
心の鈴の音を鳴らさなけばならない
みずからの水底に沈み込んだ言葉を
待って待って 手のひらをひろげて
やさしく掬う
そうしてきよらかなうつくしい小舟になって
荒廃した海でもすっくとたたずみ
大海原を渡っていくのを
僕はずっと夢見ている