名前のないケーキ|詩

名前のないケーキ|詩

名前のないケーキ|詩

2022/2/27

名前のないケーキがあったので 明け方にどんな名をつけようか考えていた 外はまだ真っ暗 鳩の歩く気配さえない 静寂という音が部屋を均一に満たしている どれほど甘くどれほどやわらかいのか 食べたらどれほど幸福になれるのか 実際に食べてみないことにはわからないけれど それはどうやらできないらしい そんな手をのばしても届かないケーキだ
ふと気づくと自分が薄い暗闇のなかで発光していた からだの肌の表面全体が光っている 胸の真ん中あたりがひときわ強く輝いている それはとてもこわいものだった とてもとてもこわいものだった あたりがはっきり見えたところで…… 照らされる世界の範囲が広がったところで…… 方位磁針がなければどこにも繋ぎとめられない わたし自身が名もなき存在なのだ
すべての人間から名前を奪う なんと呼ぶ? あの人を 彼を 彼女を あの苦手な人を どこまでもほどけていきたいと思う 自分をきつく結んでいるものがゆるんで 夕日のオレンジに包まれて消滅していけたら 帯刀していた醜い刃もともに消えていけるだろう 暮らしがわたしを締め出す前に 暮らしと手を結べるわたしの名を見つけなければ

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