小学生のころ 読書感想文のために読んだ もう名前の思い出せない 二冊の物語 児童用のやさしめの物語 いくつかの挿し絵はぼんやり覚えているのに タイトルとどんな話だったかは 消しごむで消したみたいに 思い出せなくなっているあの夏休み どこに行って どこに帰ったんだろう 僕はいま 訪問者でも 小鳥のさえずりのような音色の 挨拶でもなくなっている あのふたつの物語 ぼくがそれらを 見捨てたのだろうか